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有罪か無罪か?エラトステネス殺害事件2
by fano



さて、まだまだ続きます。さて、ここでおさらいしておきましょう。人物相関図を見てください。

さて、この次に問題になるのは法律です。

古代ギリシアでは姦通は罪になります。したがって、エラトステネスと妻の犯した事は罪になりますが、同時にエウピレトスが殺人を犯した事も罪になるわけです。現代の日本の法律ではこのような事件があれば、姦通罪が存在していないために、罪を問われるのはエウピレトスであって、情状酌量が認められたとしても有罪です。

しかし、アテナイでは「姦夫を捕まえてその報復として殺した場合は罪に問わない。」という法律があったのです。この法令がある事を考えると、エウピレトスは無罪のはずです。そして、エウピレトスもこれを理由に無罪を訴えます。

こう考えると、エウピレトスの無罪は当然のようにおもえます。しかし、エラトステネスの遺族は異議を唱えます。エウピレトスは姦通のために殺したのではなく、別の理由のためエラトステネスを殺したのであって、姦通を発見したので殺したのだといって罪を逃れようとしていると。遺族の主張はあまりあきらかではないのですが、「エラトステネスとエウピレトスの間には以前からトラブルがあった。」「エウピレトスはエラトステネスを連れ込むように奉公女に命じていた。」と主張しているようです。

なるほど、その可能性もあると思います。何らかの利害関係が裏にあって、罪が問われないようにして殺す方法として、法律を悪用したと・・・。

しかし、エウピレトスはこれに反論します。

私はソーストラトスにあった時、ともに食事をした事に注目してもらいたい。もし、私がエラトステネスに対して策謀していたなら、彼と別のところで食事をするのがよかったのか、それとも、彼を自分のところに連れ込むのがいいのか・・・。そうすれば、やつは決して家に入り込もうとはしないだろう。第二に、ソーストラトスを返して一人になった事。姦夫に報復するのを手伝うように頼む事もしないで。それに、あらかじめ親友たちに触れ回って集まってもらうように頼まなかったこと。現在アテナイにいない人の家も留守とは知らずに歩き回り、味方につけるために歩き回ったのである。

エウピレトスはあの夜何が起こるかは事前には分からなかったのだと主張しています。

さて、事件について分かる事はこれだけです。姦通を犯した妻が一体どうなったのかについては、全く弁論にかかられおらず、分かっていませんが、アテナイでは姦通を犯した妻は必ず離婚しなければならず、夫が一緒にこれからも夫婦でいたいと思っても、許されませんでした。それを考えると、おそらくエウピレトスはこの妻と離婚する事になったと思います。離婚時には子どもは父親が引き取るのが決まりでした。

姦通法

姦夫を捕らえた時、捕らえた者は妻との夫婦生活を続けざること。もし続けるならば、この者は市民権を剥奪されるべきこと。姦夫とともにいる時に捕らえられた妻は、公共の神事に参加せざること。もし参加したならば、死以外のいかなる仕打ちを受けようとも、その仕打ちは罪にならざること。(デモステネス、弁論第59番87節)

姦通を犯した妻はおそらく、実家に帰され、再婚もできず、公共の祭などに参加できず暮らさなければなりませんでした。現在の私たちからすると、そういう家庭の問題を公の法律で規定するなんてとんでもないと思うかもしれませんが、アテナイでは家庭の事についても法律で決められていました。家父長制であったアテナイ社会においては、妻が姦通するという事は生まれた子どもが夫の子どもか姦夫の子なのかわからなくなり、父から子への相続システムが破壊される事になります。男は自分の妻の子が間違いなく自分の子であるようするには、妻が決して自分以外の男と関係を持たないようにしなければいけませんでした。家父長制の社会においては妻が貞節であるという事は絶対に必要な事だったのです。

さて、この殺人事件についてどう思いますか?真実は分かりませんし、この裁判が有罪とされたのか無罪とされたのかもわかりません。

この裁判の弁論をきちんと読んでみたいという方はこちらをクリックして読んでください。この弁論をギリシア語から日本語に訳して、インターネットで公開しているバルバロイの管理人富田さんに感謝いたします。

この文章を作成するにあたって、以下の著作を参考にしました。

桜井万里子「古代ギリシアの女たち アテナイの現実と夢」中公新書、1992

アリストパネース「女の議会」村川堅太郎、岩波文庫、1954の後書き

ここで太字になっているのはバルバロイの訳を私が一部を変更して短くしたものです。引用ではありません。

姦通法については桜井万里子「古代ギリシアの女たち アテナイの現実と夢」から引用しました。













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