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◆ジャルジェ准将
誰も知らない誰も言わない◆

by VICTORY



大西洋のどまんなか、セント・ヘレナ島。
現在、この島には元フランス皇帝ナポレオン・ボナパルト氏が滞在中である。おそらくこれから先もずっと。

いい加減、ナポレオンは観念していた。あれだけな目にあえば、自分が皇帝でいることがフランス国民にとっていかに迷惑であったかを思い知ろうというものだった。それにしても、だからってここまでせんでもよかろうに。
しかし、エルバ島からの脱出という前科がある彼としては、連合国がここまで徹底した手段を取ろうとするものわかったような、わからないような、つまるところ、もうそっとしておいてくれというのが正直な心境である。ただ島の総督のロウ卿は明らかに悪意を持って自分を見ており、これだけはどうにかして欲しい、というところ。

今日も今日とて、ナポレオンは同行してきた数少ない側近の一人、ベルトラン将軍に回想録を口述筆記させていた。生い立ちから始まって、時今しも大革命を迎えようというところ。

「そうだ、たしかあの頃、こんな事があったな。あれはパリだったか、歩いていたら向こうから人がやってきた」
「ふんふん」
「パッと見て、将軍だとはわかったな。その頃私はまだハタチで砲兵少尉だったよ」
「陛下はまだ20歳だった…と」
「見ると、これがまたずいぶんと若いんだな。まあ、あの頃はまだ貴族でないと将軍になれなかったし、逆に貴族なら若造でも将軍サマになれたってわけだ」
ナポレオンはその人物の容貌を改めて思い起こしてみた。均整の取れた体つきに、おさまりの悪いブロンドの髪とはどこかで聞いたような形容だが、少なくともナリは立派な将軍サマである。軍人としてはちょっと華奢すぎる気もしたが。 「そうしたら、『氏名と官名を名のりたまえ』と来たもんだったが、それがお前、声を聞いたらじゃないか。驚きはしたけれど、すぐにははあと気が付いたな」
「そ、それはまさかあの方では?」
「そう、お前も覚えていたか」
忘れることがあろうか。近衛連隊長として、フランス衛兵隊の指揮官として名を馳せた、女傑というにはあまりに女性らしくかつ雄々しさをも備えた人といえば一人しかいない
「まあ、あの人ならば単なる飾りでもないといったところだろうな。確かに貴族の出だが、生まれと王妃の寵愛だけで出世したわけでもなかろうよ」
「なかなかの腕前を持っていたと聞き及んでいます。それと部下の掌握にも優れていたとか。残念ながらバスティーユ攻略の際に…」
「ふむ、あれは惜しい事だったな。もっとも将軍としての手腕は未知数だったという事か」
「陛下、もしかして何かとんでもない事を考えておいでじゃありませんか?まさか、あの方を…」
もっとも、あの人がナポレオンの配下でいることに甘んじるとも考えがたかったが。
「ハハ、冗談だ。…そういえば、確か、あの人はオーストリア女と同い年であったな?」
「オーストリア女」とは王妃マリー・アントワネットのことである。
「はい。それとスウェーデンのさる貴族とも」
スウェーデン!ナポレオンはその言葉を聞いただけではらわたが煮え繰り返る思いだったが、今回はつとめてそちらには思いを寄せないようにした。今となっては腹を立てるだけ損というものだ。
ところが、ナポレオンは重大な事に気がついてしまった。
「…ふむ、ということはだ、あの人ああ見えてもあれで三十路…」
「陛下!」
「な?、何だそんな物騒な顔をして」
「なりませぬ、陛下。それだけは口にしてはなりませぬ」
「どうして?別に構わんだろうが」
「いいえ、あの方ははるか後に、極東の島国で伝説となりまする。それに水を差すがごとき言葉を残したとあらば、陛下の令名に傷がつきましょう」
「何やら意味がようわからぬが、要らぬ苦労をしょいこむな、ということか。それにしても…」
ナポレオンはちょっぴり不満だった。なぜって、自分以外に伝説を持つ者がいたから。
「ご心配なく、陛下。陛下が主役の話も描かれますゆえ」
相変わらず、ベルトランの言葉は意味がよく分からなかった。

かくして、一つの真実が闇に葬り去られた。いずれ誰かが気がつく事だろうが、それはまたその時の問題だろう。さしあたって、自分の伝説を残す事が先だった。まだまだ、公正に伝えるべき事は山ほどある。
「そうだな、次はトゥーロン解放にするか。あの時…」













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