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◆諸葛亮・江東不敗は巽の風よ!
見よ、赤壁は赤く燃えている!◆

by VICTORY



 さて、曹操が激情に駆られて軍を江東に向けると、孫権は降伏勧告を拒否して迎撃態勢をしいた。お互い決め手を欠きつつ日は流れていた、そんなある日。
 呉軍の陣中に一人の穀つぶ…いや、客人がいた。重臣たちの非戦論に傾きかけていた孫権をたきつけておきながら、後は特に何をするでもなく悠々自適の陣中生活を送っている、タッパと態度だけはデカい書生面(若干農夫入っているが)の男、彼は姓を諸葛、名は亮、字を孔明といった。当年とって28、劉備軍の参謀としてブイブイいわせつつある前途多難もとい前途有望な青年軍師である。

 ところで、諸葛亮は掛け値なしに何もしていなかった。日がな一日、提供された幕舎にこもっている。護衛の兵士の話によると、「なにやら書物を読んでいる」そうだったが、何の本かまでは分からなかったという。訪ねてみても、涼やかに微笑してみせるだけで教えてくれなかったそうだ。
 しかし、実はこの兵士A(26)が語らなかった、いや語るに語れなかったことが一つだけあった。彼は諸葛亮が所用で外出していた隙を見計らって、くだんの本が何なのか確かめてみようとしたのだが、運悪く諸葛亮が戻ってきてしまったのである。
 気がつくと諸葛亮が後ろに立っていたという。振り向いた彼の目前には「明らかにいつもとは違う据わった目」をした諸葛亮がいた。そしていつのまにか首筋には刃が!そして声だけはいつもとたがわず「君は何も見なかった、いいね?」と。事実、結局本が何だったのかは確認できずじまいだったのだから、一も二もなく彼は肯いた、ただし刃が当たらないように。すると、「よし、それでは任務に戻りたまえ」と諸葛亮は彼を解放してくれた、とのことである。このエピソードは後世に伝えられることはないだろうし、もし伝わっても故意に無視されることとなるであろう。

 さて、大局的に見ると依然、諸葛亮は何もしていない。それを人一倍心配している者がいた。長者然とした風格を持つ男は名を魯粛、字を子敬という。
 彼はとかく不満が募っていた。向こうの頼みで仕官してやったのに、何で周瑜殿はあんなに私を見下した態度を取るのかとか、私はあんなにお人好しでも気弱でもいぢめられっ子でもないぞとか。何と比べて「あんなに」といっているのかは当の本人にも実のところわかっていなかったが。目下のところはそれらに加えて、諸葛亮が「周瑜殿に矢を10万本用意するように頼まれ、それを三日の期限で引き受けたクセに二日たっても何もしようとしない」ということであった。魯粛は周瑜が諸葛亮にライバル意識、ひいては殺意すら抱いているのを感づいていたが、彼が諸葛亮に同情的だったのはことさらにお人好しだったからではなく、諸葛亮ひいては劉備陣営と友好を保つのが曹操に対抗する有効な手段だと多少は現実的に考えていただけのことであった。
 魯粛も、諸葛亮が読みふけっているという書物が何なのか知りたがっていた。そして、彼は兵士A(26)よりは無理が利いた。もとよりそう広くはない幕舎である。魯粛はついにその現場を押さえることに成功した。 諸葛亮が慌てて隠した隙間からは「三国志演義」と書かれた題箋がチラリと見えたのだった。

 諸葛亮はあからさまに取り乱していた。
「ささささあ、魯粛どの、そろそろ矢を準備しに行きましょう」
魯粛は体よく幕舎から外に出されてしまった。
「先生、あの本は一体?」
「いいいやあ、なななに、あれには我々のなすべきことが書かれているのですよ」
「ほぉ!そのようなものを一体どこで手に入れたのですか?」
「ははは、私が昔隆中にいたころ、とある旅人から譲られましてな」
「作者は?いつ書かれたのです?何で『三国志』っていうんですか?ねえねえ?」
諸葛亮がふと立ち止まり、魯粛の方に振り向いた。兵士A(26)が居合わせたら、あの時と同じだと言ったに違いないあの表情だった。諸葛亮はまたも声だけはいつもと変わらずに言った。
「魯粛殿、世の中には知らない方が身のため、ということもあります。ヨウスコウカワイルカのエサになりたくなかったら、余計な詮索はしないことですよ」
さすがの魯粛も後に「曹操の大軍を実際に目にしたとき以上の恐怖に襲われた」と述懐したほどであった。話題は、10万本の矢を調達する方法へと移った。
「…すると、軍船にワラ束を兵士に偽装したものを乗せ、敵に矢を射掛けさせるというのですな!説明的ですが」
「その通り!10万本といわず、20万でも30万でも集めてみせましょうぞ!」
先ほどの気まずさを振り払うためか、諸葛亮はやたらと自身たっぷりだった。

 赤壁は、紅蓮の炎に包まれていた。船という船は燃え盛り、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図、というやつである。渦巻く炎になすすべもなく、全てが灰燼に帰そうかという勢いだった。
呉軍の船が。
 諸葛亮の見栄だけでノコノコ出かけていった偽装船団は、火矢のつるべ打ちにあった。ワラ人形を満載した船などカモがネギしょって鍋持ってやってくるようなものである。もとより諸葛亮に天気だの風向きだのを変える力がある訳でもなく、矢は容赦なく彼らにも降り注いだ。
「撃たれれば燃える。撃たれれば死ぬ。どんな船も、どんな人間も同じか…」
息も絶え絶えに諸葛亮がつぶやく。
「ろ、魯粛どの…」
「じゃかあしぃ!」
魯粛は心底、後悔していた。こんなペテン師の口車に乗らなきゃよかった。いっそ、郷里で富豪やってたままの方がなんぼかマシだったかしゃん。
炎が、彼らの視界と思考を遮りはじめた…

−などというオチは因果律が許さなかった。むしろ、逆行して働いたというべきか、結果が原因をつくりあげていった。曹操は天下統一を為し得なかった。そのためには今回の出兵には敗れねばならない。諸葛亮にはこれから先も曹操を苦しめてもらわねばならない。魯粛が劉備と孫権の友好を取り持って曹操に対抗せねばならない。だから、

「おお!先生、この濃霧なら上手くいきそうですな!」
「丞相、敵襲です!」
「むうう、こう空気が湿っぽくては火矢も役には立つまい。仕方ない、通常の矢で応戦せよ!」

「風向きが変わった!東南の風だ!作戦を開始せよ!」
「諸葛亮…あの男、生かしておいてはいずれかなわぬ相手となろう…」
「はっはっはっ、周瑜殿に伝えられよ!この好機を逃さずかかられよ!私なぞにかかずらっている暇はありませんぞと!お先に失礼いたす!」

「…丞相!いけません!」
「程c、どうした?」
「兵糧、物資を満載しているのなら、あれほど船足が軽いはずはありませぬ!我々は、きやつらに謀られたのです!」 「閣下、わが軍の船は鎖でつながれていて逃げられませぬ!」
「奴等の船から火が!」
「衝突します!!!!」

「丞相、今はただ無事に許都に帰還することをお考え下され」
「…ああ、郭嘉が生きていれば」
歴史は変わっただろうか?













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