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貞永式目制定の趣旨
武家社会最初の成文法である貞永式目は、武家社会の特徴である「道理」と、源頼朝以来の「先例」を基礎としており、そこには公家法(律令のこと)や本所法(荘園などに適用される法)とは相違する規定も含まれていました。
そこで執権北条泰時は、六波羅探題として京都にいる弟の重時に二度にわたって書簡を送り、式目制定の趣旨を朝廷側に正しく理解してもらうように指示したのです。
ここでは、貞永元年(1232年)8月8日付と9月11日付のうち、後者のほうを紹介します。

制定の趣旨
原文
 御成敗候べき条々の事註され候状を、目録となづく(名付)べきにて候を、さすがに政(まつりごと)の躰(てい)をも注載せられ候ゆへに、執筆の人々さか(賢)しく式条と申字(もうすじ)をつけあて候間、その名をことごとしきやうに覚候によりて式目とかきかへて候也。其旨(そのむね)を御存知あるべく候歟(か)。
 さてこの式目をつくられ候事は、なにを本説として被注載之由(ちゅうしのせらるるのよし)、さだめて謗難(ぼうなん)を加事(くわうること)候歟。ま事にさせる本文にすがりたる事候はねども、ただどうり(道理)のおすところを被記(しるされ)候者也。かやうに兼日にさだめ候はずして、或はことの理非をつぎにして其人のつよきよはきにより、或は、御裁許(ごさいきょ)ふりたる事をわす(忘)らかしておこしたて候。
 かくのごとく候ゆへに、かねて御成敗の躰をさだめて、人の高下を不論(ろんぜず)、偏頗(へんぱ)なく裁定せられ候はんために、子細記録しを(置)かれ候者也。

御成敗:裁くこと。裁決すること
目録:一つの目的の元に、体系的・網羅的に多数の条項を集大成した法規
政の躰:本来朝廷の管轄下にある祭祀・仏事のことを第一・二条に載せたことを示すのか。
さかしく:気を利かせて
ことごとしき:ものものしい。大げさな
本説:根拠となる確かなもの。よりどころ
:朝廷の人々
謗難:誹謗すること
兼日:かねてから。前もって


裁判に関わる法令を集めたものは本来目録と名づけるべきなのですが、やはり神仏・政治についての法令も載せたので、これを執筆した人たちは気を利かせて式条という字をあてたのです。しかし、私はその名をものものしいと感じたので、式目と書き換えました。

 さて、この式目を作ったことについては、なにを根拠にして書かれたのかと、人はきっと非難することでしょう。確かにこれといった根拠はないのですが、ただ道理から推測されることを書いたのです。このように前もって定めておかないと、(裁判の際に)ことの理非を二の次にして当事者が強いか弱いかによって、またある場合には判定が下されたことを忘れたふりをして訴訟を起こすでしょう。
 このようなことがあるので、かねてから裁判のきまりを定めて、当事者の身分の高下に関わらず、えこひいきなく裁定が下されるために、詳しく記述しておいたのです。

解説
ここでは、式目という名の由来と、道理をもとに公平な裁判をするための基準としようとした事が書かれています。鎌倉幕府の主な仕事は御家人の裁判だったので、裁判の不公平という問題はそれこそ政権の死活問題だったのです。

公家法との違い
原文
この状は法令のおしへに違するところなど少々候へども、たとへば律令格式はまな(真名)をしりて候物のために、やがて漢字を見候がごとし。かな(仮名)ばかりをしれる物のためには、まなにむかひ候時は人の目をしいたるがごとくにて候へば、この式目は只かなをしれる物の世間におほく候ごとく、あまねく人に心えやすからせんために、武家の人へのはからひのためばかりに候。これによりて京都の人の御沙汰、律令のおきて聊(いささか)もあらたまるべきにあらず候也。
凡(およそ)法令のおしへめでたく候なれども、武家のならひ、民間の法、それをうかがひしりたる物は百千が中に一両もありがたく候歟。仍(よって)諸人しらず候処に、俄に法意をもて理非を勘(かんがえ)候時に、法令の官人心にまかせて軽重の文どもを、ひきかむがへ候なる間、其勘録一同ならず候故に、人皆迷惑と云々、これによりて文盲の輩(ともがら)もかねて思惟し、御成敗も変々ならず候はんために、この式目を注置れ候者也。京都人々の中に謗難を加(くわうる)事候はば、此(この)趣を御心え候て御問答あるべく候。恐々謹言
九月十一日    武蔵守
駿河守殿

法令:律令格式などの公家法
まな:真名。漢字のこと。
しい:癈う。器官の働きを失うこと
めでたく:立派で優れていること
百千が中に一両もありがたく:100人1000人のうちで1人2人もいそうにない
法意をもて:律令の趣旨により
ひきかむがへ:つきあわせて調べる
勘録:勘録状。諮問にこたえて調査し、考えた内容を詳しく記して上部機関に提出する意見書
武蔵守:執権北条泰時
駿河守:六波羅探題北条重時。泰時の弟。


この内容は律令の説く内容と違う点も少々ありますが、例えば律令格式は、漢字を知っている者にとってはすぐに読めるでしょう。しかし、仮名しか知らない者は、漢字を見ると目が駄目になってしまうようなものです。ですから、この式目は仮名しか知らない者が世間に多いのですから、広く人々に納得させやすいように、武家の人たちへの配慮のためだけに作ったのです。これによって京都の朝廷でのとりきめや律令の規定が少しも改まるというようなことはありません。
だいたい、律令格式は立派なものではありますが、武家や民間の中で、それを知っている者は100人1000人のうちで1人2人もいないでしょう。よって、ほとんどの人が律令を知らないため、急に律令でもって正邪を判断する場合には、律令に詳しい官僚が罪の軽重についての法文を恣意的に引用してしまいます。そのため、判決草案は一致せず、人々は皆迷惑しているということです。

こういうことなので、字の読めない人でもあらかじめ考え、判決もあれこれ変化しないように、この式目を作成したわけです。京都の人々の中で非難を加える者がいたとしたら、この趣旨をよく心得て受け答えしていただきたい。恐々謹言。

解説
ここでは、武家の人を対象にわかりやすく定めた点、また律令を変更する意志のない点などが読みとれます。
読んでみて分かったと思いますが、非常に平易な文章で書かれており、漢字も非常に少ないですよね。私たちでも単語さえ知っていれば簡単に読めます。










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