大遠征 アレキサンダーの野望 |
著者:マイケル・ウッド (吉野美耶子訳) |
出版:Newton Press 2000年 2500円
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推薦者:ひで |
アレクサンドロス大王に関しては様々な本がこれまでに出版されてきています。その中で実際に現地に赴
くことで得られた実際の地形の情報や地元につたわる伝承が中に盛り込まれ、図版も豊富な本書は、アレ
クサンドロス大王の生涯をたどるのみならず、実際にアレクサンドロス大王が遠征した地域に赴き、その
足どりを辿った紀行書といってもよい内容を含んでいます。
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ギリシア・ローマ盗賊寄譚 |
著者:塚田孝雄 |
出版:中央公論新社 2000年 1800円 |
推薦者:ひで |
古代ギリシア,ローマにおいて“盗賊”が海でも陸でも盛んに活動していました.そんな盗賊たちをテー
マにした本.タイトルではギリシア,ローマとなっていますが,他にフェニキア人の海上での活動につい
ても言及があります.盗賊として活動する側とそれを取り締まる側にまつわるエピソードがいろいろ書か
れている本で,古代地中海世界に興味を持ってもらうのきっかけとしては手ごろな本だと思います.
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初期キリスト教とローマ社会 |
著者:島創平 |
出版:新教出版社 2001年 1800円 |
推薦者:ひで |
古代地中海世界においてあまたの宗教があるなかでキリスト教がなぜひろまっていったのか。キリスト教
の女性観、奴隷観、性倫理、政治観について、従来言われている説を検討し、そのうえで初期キリスト教
をローマ帝国の歴史の中に位置づけようとした一冊。キリスト教を特別なものとして扱うのではなくて、
あくまで古代地中海世界の一宗教として、古代社会の中に位置づけようとしており、キリスト教に対する
理解がより深まるのではないかと思います。
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ギリシア案内記 (上)(下) |
著者:パウサニアス(馬場恵二訳) |
出版:岩波文庫 |
推薦者:相良みちる |
パウサニアスが立ち寄った町の様子を書き出した書。この本はその中の抜粋でアテナイをはじめとする有
力都市に関する記述を抜き出している。完全なもので日本で出版されているものは、2万円位したと思う
ので(注釈本がまた別にある・・・)、手軽に読みたいのならこれがおススメ |
ガリア戦記 |
著者:カエサル |
出版:講談社学術文庫、岩波文庫他 |
推薦者:相良みちる |
英雄カエサルが、現フランス、イギリス方面への遠征先からローマ元老院へ宛てた報告書。当時まったく
の未開であった現地での、先住民との戦いや、風土風習をつぶさに伝えたこの書は、ローマ市民を熱狂さ
せたという。
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イリアス (上)(下) |
著者:ホメロス (松平千秋訳) |
出版:岩波文庫 |
推薦者:相良みちる |
ギリシア人の精神世界を形成するギリシア神話と、史実であるトロイア戦争を語った物語。ホメロスとい
う吟遊詩人が語り継いだこの話は、スパルタかたさらわれた王妃を取り戻しに出征したギリシア連合軍と
トロイアとの戦争の様子を描き出している。
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アテナイ人の国政 |
著者:アリストテレス |
出版:岩波文庫 |
推薦者:相良みちる |
謎に包まれていた古代ギリシアポリスの生活、仕組みを明らかにしたアリストテレスの著。エジプトでパ
ピルス本として発掘されたこの書には、ギリシア最大のポリスであるアテナイの内政が活き活きと描かれ
ている。
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ローマ帝国愚帝列伝 (講談社選書メチエ) |
著者:新保良明 |
出版:講談社 2000年 1600円 |
推薦者:ひで |
ローマ帝国の歴史を通じて、暴君・愚帝と呼ばれるような皇帝がしばしば現れ、彼らの残虐・淫蕩・放埒の有様を述べた逸話は数多く残されている。しかし暴君がしばしば出現してもローマ帝国がそこで滅ぶことが無く続いていったのはなぜか。本書はそのような「愚帝」として扱われる皇帝6人をピックアップして彼らの生涯を描きながらローマ帝国の実像に迫ろうとする。とりあげられている皇帝はどこかで名前を聞いているような“有名人”がそろっているだけに、ローマ帝国に関心を持ってもらうのには丁度良いかもしれません。 |
テミストクレス
古代ギリシア天才政治家の発想と行動 |
著者:仲手川良雄 |
出版:中央公論新社 2001年 1650円 |
推薦者:ひで |
紀元前480年、サラミスの海戦でギリシア連合軍はペルシア軍に勝利した。テミストクレスはその勝利の立て役者である。彼はまた、ペイライエウスの城壁の建造や、アテナイの海軍力増強といった、後のアテナイの発展の礎を築いた人物でもある。このような業績を残したテミストクレスの生涯をつづる.紀元前6世紀末〜5世紀前半のギリシア史,ペルシア戦争に関して知りたい人は読んでみましょう. |
都市国家のアウトサイダー |
著者:ポール・マケクニー(向山宏訳) |
出版:ミネルヴァ書房 1995年 3500円 |
推薦者:ひで |
紀元前4世紀後半、アレクサンドロス大王は東地中海世界から中央アジアに至る広大な帝国を建国した。彼の死後それらの地域にマケドニア人、ギリシア人を支配者とするヘレニズム諸王国が建国され、ヘレニズム世界が成立する。著者は紀元前4世紀のギリシア史を衰退の歴史としてではなくヘレニズム世界成立に至る新たな発展への転換期として捉え、そのような世界を成立させた要因として都市国家の枠の外で活動する様々な人々(アウトサイダー)の存在を挙げる。翻訳文で読みにくい箇所もありますが、紀元前4世紀〜ヘレニズム期のギリシア社会を理解するために一読してみてはいかがでしょう。
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アレクサンダー大王(知の再発見双書) |
著者:ピエール・ブリアン(桜井万里子監修) |
出版:創元社 1991年 1300円 |
推薦者:ひで |
アレクサンドロス大王について様々な史料をもちいつつ,その前段階となるペルシアとギリシアの関係やマケドニアについての事柄からアレクサンドロス大王の死までを書き上げた本.豊富な図版,史料に基づく簡潔な記述からなる本文に加えて彼の時代の歴史について書いた歴史家,後生におけるアレクサンドロス像,マケドニア軍の戦闘の解説などアレクサンドロス大王にまつわる様々なことを扱った資料集がつく。史料を基に簡潔にまとめられた本編はアレクサンドロス大王について大まかに知るのに丁度良いですが、所収の図版や資料集もしっかり読むと後世の様々な立場の人間がそれぞれの視点からアレクサンドロス大王像を構築していった事などがよく分かってより面白いです。 |
コロッセウムからよむローマ帝国 |
著者:島田誠 |
出版:講談社 1999年 1600円(税別) |
推薦者:ひで |
ローマの街に今も残るコロッセウム。そこで行われる「見せ物」にどの様な人々がいかなる意識をもって出場したのか、コロッセウムに集う解放奴隷や元老殷議員たちがどのような意識を持って日々を暮らしていたのか.コロッセウムの建設,そこでの興業,観客を通じて共和政末期から帝政ローマの社会がどのように変わっていったのかということを示そうとする。 |
古代ギリシア人 自己と他者の肖像 |
著者:ポール・カートリッジ(橋場弦訳) |
出版:白水社2001年 3800円 (税別) |
推薦者:ひで |
古代ギリシア人は自らを認識するために二極対立の思考法を行っていた。そのなかからギリシア人と異民族、男性と女性、自由人と奴隷、人間と神といったものをとりあげて古代ギリシア人の心性に迫る。
世の中には,読んだあとに昔の人々も我々とは変わらないんだなと思わせる本は多々ありますが,昔の人間が現代の我々とは異なる存在であることを改めて認識させてくれるこのような本も時々読んでみると良いのではないでしょうか.
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カエサル |
著者:長谷川博隆 |
出版:講談社(講談社学術文庫)、1994年、960円 |
推薦者:ひで |
共和政末期〜帝政に至る時代の古代ローマ史について触れる時に、ある一人の人物の存在が非常に重くのしかかってくる。その人物については至高・無謬の存在として賛美する人々がいる一方で政治家・軍人としては同時代のローマ人の中で決してずば抜けて優れた者ではないとする人々がいる。その問題の人物、ユリウス・カエサルというローマ史の転換期に生きた一政治家の波乱に富んだ生涯を描き出す。紀元前1世紀と言う時代を彼がどの様に生きて、どの様に変えていったのかを考えることに焦点をしぼりながらコンパクトにまとめた一冊。 |
政治家 キケロ |
著者:クリスチャン・ハビヒト(著)、長谷川博隆(訳) |
出版:岩波書店、1997年、2800円 |
推薦者:ひで |
キケロについては古代ローマ最高の文筆家,雄弁家としての評価がある一方で、政治家としての彼は同時代に生きたカエサルに対する高い評価の裏返しとして著しく低く評価されてきた。本書ではキケロの生涯をたどりつつ、共和政末期のローマの様々な政治的局面における彼の行動をもとに政治家としてのキケロの姿に迫る。政治家としてのキケロのイメージの修正を迫る本であるが、キケロの低評価と対をなす19世紀以来のカエサルの高評価が今もなおあまり異議を唱えられることなく引き継がれていることを認識させられ、歴史上の人物の評価の難しさを感じさせる。 |
古代ローマの市民社会(世界史リブレット) |
著者:島田誠 |
出版:山川出版社 1997年 729円 |
推薦者:ひで |
帝国全土の自由人にローマ市民権を与えた212年のアントニヌス勅令によりローマ市民社会は解体された.本書はそのローマ市民社会形成の歴史,ローマ市民社会の政治への関わり方,ローマ市民と家,市民の社会との関わり方について書かれている.時折かなり専門的な記述もあるが,王政から元首政成立に至るまでのローマの歴史,ローマの国制や社会について簡潔にまとめられており,ローマ史に関心のある人は読んでみましょう. |
古代への情熱―シュリーマン自伝― |
著者:シュリーマン・関楠生 訳 |
出版:新潮文庫 |
推薦者:一ノ風 |
かの有名なトロイア(トロヤ)、ミュケーナイを発掘したシュリーマンの自伝です。
いやはやすげえやつもいるもんだ、と驚嘆する事うけあいです。シュリーマンは家族の崩壊、恋人との悲劇的な分かれ、貧乏とおよそ人生の苦汁をなめつくしており、それでも古代ギリシャへの情熱を捨てず、熱心に働き、且つそのあいまあいまにいくつもの(十数カ国以上!)の言語をマスターします。そしてホメロスの著述を信じて発掘を自費で行い成功するわけです。夢を持つことは重要だなと強く感じさせてくれる貴重な本です。やっぱり夢を持たねばいけませんよ、夢を。人生の岐路に立たされている人は是非読んでみましょう。
あと、シュリーマン日本に来てたのね、というのでもちょっとびっくり。 |
古代アレクサンドリア図書館 よみがえる知の宝庫 |
著者:モスタファ・エル=アバディ著 松本慎二訳 |
出版:中央公論新社 660円(税別) 1991年 |
推薦者:ひで |
古代アレクサンドリア図書館の創設からそこにおける学問の発展,そして戦乱と宗教間の争いの中での衰退の歴史,かの地に於ける様々な学問の発展の様子,さらにかつて蔵書数50万,さらに付設する研究施設ムーセイオンをももっていた古代世界最大の図書館の全容にせまる.
ユネスコによるアレクサンドリア図書館復興プロジェクトの一環として刊行された本書はアレクサンドリア図書館が建設されてから2200年以上を経た今も決して絶えることのない人類の知の探究への熱意を感じさせてくれる |
アレクサンドロス大王 「世界征服者」の虚像と実像 |
著者:森谷公俊 |
出版:講談社 1700円(税別) 2000年 |
推薦者:ひで |
マケドニア,ギリシア連合軍を率いて遠征に明け暮れた短い生涯を終えたとき,アレクサンドロス大王は「百戦百勝の軍事的天才」,「東西文明の融合推進者」として神話化され,現代の人々の大王のイメージにも影響を与えている.これに対して著者は近年の研究の成果をふまえつつ,アレクサンドロス大王の戦争,大王に対抗したダレイオス3世,アレクサンドロスの東方政策について古代の史料を厳密に再検討してその実像にせまる.
合戦に於いていくつかの失敗をしつつも天才的資質でそれをカヴァーしてゆく“成長する軍事的天才”としてのアレクサンドロス像が厳密な史料批判にもとづく解釈からなる叙述により描き出されている.アレクサンドロス大王の実像の一端を知ることが出来ると共に伝承の形成の実態や専門的な歴史学研究の現場の一端をかいま見ることが出来る本でもあり,歴史学を志す人も一読することをおすすめします. |
古代ギリシアの女たち |
著者:桜井万里子 |
出版:中公新書 |
推薦者:fano |
私のお気に入りの本。古代ギリシアの女性の人生についてわかりやすく教えてくれる。結婚、出産、そして離婚。古代ギリシアの男性は女性をそういうイメージで捕らえていたのか、女性の役割をどう考えていたのか。ギリシアの社会を知ることのできる本だと思う。 |
王妃オリュンピアス |
著者:森谷公俊 |
出版:ちくま新書 |
推薦者:fano |
フィリッポス2世を暗殺したのはオリュンピアスだったのか? アレクサンドロス大王の母オリュンピアスをはじめとするマケドニア王家の女性の悲劇を書いた本。アレクサンドロス大王の死の後、マケドニア王家の女性はあらゆる手段を使って自分を守ろうとするが、結局悲劇的な死をとげる。 |
古代の旅の物語 |
著者:ライオネル・カッソン 小林雅夫監訳 田畑賀世子 野中春菜訳 |
出版:原書房 3800円 1998年 |
推薦者:ひで |
古代エジプトから紀元4〜6世紀のキリスト教徒の巡礼の旅に至るまでの古代世界における旅とそれにまつわるものを扱った本.古代世界の旅の目的,陸上交通と海上交通,旅において利用された施設の実態について様々なことを知ることができる. |
ギリシアを知る事典 |
著者:周藤芳幸 村田奈々子 |
出版:東京堂出版 2800円 2000年 |
推薦者:ひで |
古代,現代のギリシアを特徴づける16のトピックを選び出して書かれた本.事典と銘打たれているが事典というよりも読み物といった感じの本で,興味のあるところから適当に読み進めていける.古代ギリシアに関しても地理,ポリスの景観,構造について詳しく述べられているのみならず,近現代ギリシアに関しても(最近は少しずつ関連書籍がふえているものの)未だ論攷が数少ない現状に置いてその歴史,社会をしるうえで良いと思う. |
線文字Bの解読 |
著者:J.チャドウィック著 大城功 訳 |
出版:みすず書房 2500円(税別) 1997年 |
推薦者:ひで |
クレタ島より出土した粘土板に刻まれていた線文字Bは発見されてから半世紀以上たった1952年に建築技師であったマイケル・ヴェントリスの手により解読され,古代史研究の発展をもたらした.ヴェントリスの共同研究者であったチャドウィックの手になるこの本において言語の構造上の特色を言語学的分析・総合したうえでの推理により達成された線文字Bの解読の過程が詳しく書かれている.
解読直後に事故死した天才ヴェントリスに対する尊敬の念に満ちているこの本を読んだときには未知の文字の解読の過程のおもしろさと共にその解読を通じて伺われたミュケナイ世界の姿の一端が伝わってくることでしょう. |
ヘレニズムとオリエント |
著者:大戸千之 |
出版:ミネルヴァ書房 6000円(税込み) 1993年 |
推薦者:ひで |
ヘレニズムというとギリシア文化のオリエントへの流入,文化の融合として語られがちである.しかし近年ではオリエントの側からの視点での研究の重要性が指摘され,そのような研究が増加しつつある.
本書では19世紀のドロイゼン以来の「ヘレニズム」概念,ギリシア人のオリエント支配,都市建設といったギリシア・マケドニア人の東方支配とその影響を検討しさらに小アジア〜メソポタミアの各地におけるギリシア文化の受容のケーススタディを通じて,オリエントが主体的にギリシア文化と関わり合っていたということを明らかにする.これを読めば,セレウコス朝の支配の一端を知ることができるとともにヘレニズムに対するイメージは一新されることでしょう. |
王宮炎上 アレクサンドロス大王とペルセポリス
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著者:森谷公俊 |
出版:吉川弘文館 1700円(税別) 2000年 |
推薦者:ひで |
紀元前330年,マケドニア王アレクサンドロス3世はアケメネス朝ペルシアの王都ペルセポリスを占領し王宮を焼き払った.この王宮炎上事件を巡っては古代の伝承の時点でも意図的な物か偶発的な物か諸説があり,現代の研究においても定まっていない.
ペルセポリス炎上事件を巡って書かれた古代の史料を丹念に検討することを通じて事件の実態に迫ると共にこの事件を巡る伝承が形成された背景を明らかにする.そして様々な伝承に彩られたアレクサンドロス大王の実態に迫ることを試みている. |
アレクサンドロス大王 「世界」をめざした巨大な情念
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著者:大牟田章 |
出版:清水書院 1984年 620円(税別) |
推薦者:ひで |
紀元前334年,マケドニア・ギリシア連合軍を率いて東方遠征に出発し,その後紀元前323年に死ぬまでの短い間にギリシアからインドにまで至る広大な領域を征服したアレクサンドロス大王についての伝記.
欧米の研究にしばしば見られるようなアレクサンドロスの東方遠征をギリシア文明の伝播や民族融合の理念といったギリシア中心的な視点を強調することなく,あくまでも征服活動として捉えた上でアレクサンドロスが世界史上に於いて占める位置を考えようとした本.日本語で読むことの出来るアレクサンドロスの伝記としては学問的には今なお高水準の物だと思う.
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丘の上の民主政
古代アテネの実験 |
著者:橋場弦 |
出版:東京大学出版会 2800円(税別) 1997年 |
推薦者:ひで |
アテナイ民主政の始まりから終わりまでを出来るだけ多くの市民に対して政治に参加する機会を与えること,政治に携わる者の責任を厳しく追及することの2点(「参加」と「責任」のシステム)から論じた概説書.アテナイ民主政全般はもちろん著者の専門分野である公職者弾劾,執務診査にまつわることが詳しく述べられている.
通常言われる時がたつにつれて衆愚政におちいっていくという論に組みせず紀元前4世紀にむしろ「参加」と「責任」のシステムが整備され,民主政がより精緻なものとなっていったという著者の論には説得力がある.あと,通常の歴史書と異なり非常に読みやすい文章で書かれていることもおすすめ. |
ローマ五賢帝
「輝ける世紀」の虚像と実像 |
著者:南川高志 |
出版:講談社 660円(税別) 1998年 |
推薦者:ひで |
「人類が最も幸福かつ繁栄した時代」-かつて18世紀の歴史家ギボンはネルウァからマルクス・アウレリウスに至る五賢帝時代をこのように呼んだ.英明な君主が元老院と協調して政治を行い,優秀な人材を養子とする「養子皇帝制」をとることにより帝位を巡る混乱もなく安定した時代というこの時代に対する一般的なイメージに対して,帝位継承を巡っては様々な権力抗争があり「養子皇帝制度」など存在しないこと,安定した社会階層の上に立つ皇帝が,階層の最上位に位置し広範な姻戚関係により結びついた元老院議員層を支持基盤としつつ彼らと堅密な関係を維持することで帝国を統治した時代であったことを論じている.
プロソポグラフィー的手法を取りながら論を進めているので数多くの人名が登場して煩わしく思う人もいるかもしれないが,帝政初期のローマの政治史の本としては良い本だとおもう. |
ポンペイ・グラフィティ 落書きに刻むローマ人の素顔 |
著者:本村凌二 |
出版:中央公論新社
1996年 699円(本体価格 |
推薦者:ひで |
西暦79年,ナポリ湾に面した都市ポンペイは町の北方にあるヴェスヴィオ火山の大噴火によって火山灰の下に埋もれてしまった.その後ポンペイの町は近代になって発掘が行われ,現代の我々は古代の都市の生活を目の前に再現することが出来るようになった.ポンペイの都市の建造物に書かれたさまざまな落書きを手がかりにして古代ローマの一都市ポンペイの社会文化に迫った本.当時の人々の生活ぶりが非常によく分かる.いつの時代も人間はそんなに変わらないと思うとともに古代人と現代人が極めて異質なものであることにも気づかされるでしょう. |
ギリシア文化史1〜8
(ちくま学芸文庫) |
著者: ヤーコプ・ブルクハルト著
新井靖一訳 |
出版:筑摩書房
1998〜1999年
各巻1200円〜1600円(税別 |
推薦者:ひで |
19世紀の歴史家ブルクハルトは国家形態,哲学,芸術といった古代ギリシア人が遺した物をとりあげ,さらに時代的な発展の中で検討し,ギリシア的なる物の発展,後世への継承までを論じてゆく.本書に対しては肯定的な声と同時に好事家的で学問的でない等の批判が浴びせられてきている.現在の歴史学の水準から見ると古くなっている部分があるが,非常に幅広い古典史料を渉猟し様々な解釈を引き出しつつ書かれた本書は著者の鋭いひらめきや独自の視点に満ちており,古代ギリシア的な物に浸る手引き,ブルクハルトの遺した一つの芸術作品として,刊行されてから100年を経た今もなお読むに値する本であろう. |
ローマはなぜ滅んだか(講談社現代新書) |
著者:弓削達 |
出版:講談社
1989年
680円 |
推薦者:ひで |
「ローマはなぜ滅びたか」をめぐっては昔から数多くの説が提示され続けている.本書では周辺地域の征服と支配による世界帝国への発展,帝国の支配,経済的発展の実態,文化の爛熟について述べたうえでローマ帝国の衰退,滅亡を帝国の周辺との関わりから論ずる.自己(ローマ)-他者(ゲルマン人など)の関係という視点からローマ滅亡を考える著者の問題意識は本書執筆当時('89年)の日本の状況に触発された物であるという.歴史家の同時代認識と歴史研究の関係について考えさせられる本. |
スパルタクスの蜂起(新版) 古代ローマの奴隷戦争 |
著者:土井正興 |
出版:青木書店
1988年
2600円 |
推薦者:ひで |
紀元前73年,南イタリアの都市カプアの剣闘士養成所から脱走した70人の剣闘士奴隷によりはじめられたスパルタクスの蜂起は,やがて20万人にもおよぶ奴隷を結集する古代ローマ史上最大の奴隷蜂起となった.スパルタクスの蜂起を当時のローマ社会の事情や奴隷の実態から説き起こし,蜂起の発生から敗北までの過程を余すところなく伝えると共に,敗北に終わったこの蜂起が後の時代に何を残したのかということを考察した本. |
生き残った帝国ビザンティン
(講談社現代新書) |
著者:井上浩一 |
出版:講談社 600円 1990年 |
推薦者:ひで |
ヨーロッパとアジアの接点に位置し,多くの国々が周りで興亡を繰り返す中でなぜ1000年もの長きに渡ってビザンティン帝国は存続し得たのであろうか.その問いに対して著者はビザンティン帝国が常にローマの後継者という伝統をただ守ったのではなく常に変革を行っていたこと,皇帝専制のもとでの柔軟さを有したためであると説く.ビザンティン帝国の1000年の歴史を一望するのにちょうど良い本でもあり,「帝国」とは何かを考える手がかりにもなると思う. |
ビザンツ 幻影の世界帝国 |
著者:根津由喜夫 |
出版:講談社選書メチエ 1,700円 |
推薦者:夜なべ紳士 |
時は12世紀、ビザンツ帝国は激動の波涛を漂っていた。東方から押し寄せるトルコ人、西方から帝国を脅かすノルマン人、そして十字軍。さらには、十字軍とともに東方での権益を拡大してきたイタリア海港諸都市。 この本の主人公もとい対象であるコムネムス朝のマヌエル1世はそうした複雑な国際情勢に矛盾を抱えながらも果敢に対処していこうと奮闘する。かれ、マヌエル帝の時代のビザンツの政治・社会・経済、またビザンツ帝国が いかに生き残っていったかがわかる一冊である。ビザンツ帝国だけで1000年、さらに古代ローマを含めればもう1000年。ローマ人と自他共に認める国がなぜこのように長命であったのか。その秘訣の一端を読み解いてくださいな |
海の都の物語 |
著者:塩野七生 |
出版:中公文庫 |
推薦者:池田 |
荒れ地同然の潟に国を興してから軍事と経済のバランスを1千年保ったヴェネチア共和国を描く作品。東地中海世界が魅力的に緻密に描かれています。
塩野さんワールド!?へはまずこの本から。
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