ドラキュラの世紀末 ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 |
著者:丹治 愛 |
出版:東京大学出版会 |
推薦者:皐月闇に陰る |
黒いマントを翻す吸血鬼はTVに映画にマンガにと大活躍ですが、現在私たちが目にするそれらの吸血鬼
のイメージは今から100年ほど前のイギリスの作家ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』によっ
て形作られたものです。吸血鬼にまつわる伝承は東欧とバルカンに古くより言い伝えられており、また歴
史上にはワラキア公やエリザベート・バートリなどホンマモンの吸血鬼も存在していたのです。吸血鬼は
決してブラム・ストーカーの創作によるものなどではなかったのです。事実、彼は伝説などを元にドラキ
ュラを書き上げたのですが、実は彼がドラキュラを書いた時代の気分というものも色濃くにじみ出ていた
のです(それがこの本のテーマです)。彼の時代のイギリスは´陽の没することのない大英帝国’であった
のですが、既にあちこちに綻びと亀裂が現れてきていました。例えば、アメリカとドイツの追い上げが世
界の工場たる地位を脅かしてきていたことへの焦り、ユダヤ人や外国人に対する偏見などの暗黒面が『吸
血鬼ドラキュラ』のストーリーに影響していたことを読み解いていく展開になっています。
ダラダラと解説をつけてしまいましたが、とっても読みやすい本です。
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〈標準〉の哲学 スタンダード・テクノロジーの300年 (講談社選書メチエ) |
著者:橋本毅彦 |
出版:講談社 2002年 1500円 |
推薦者:ひで |
現在、いろいろな部品が標準化され互換性を持つと言うことは当たり前のことになっている。しかし互換
性、標準化が始まったのは近代に入ってからのことであった。本書は18世紀フランスの武器製造における
互換性の始まりから、アメリカにおける発展、テイラーシステムの登場からデファクトスタンダードにい
たるまでの歴史を辿る。本があるようであまり無い分野を扱った本ですので、技術史に少しでも興味のあ
る人やものづくりに興味のある人はぜひよんでみましょう。
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ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命 (講談社選書メチエ)
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著者:南直人 |
出版:講談社 1998年 700円 |
推薦者:ひで |
ヨーロッパ風の食事とというと紅茶やコーヒーといった飲み物があり、ミルクやバターなどの乳製品や肉
を多く摂取するというイメージがあるでしょう。しかしそうした「ヨーロッパ風食事」の出現はヨーロッ
パの近代化の歩みと大きく関係があります。またレストランの出現やテーブルマナーといったものもそれ
と関係があります。ヨーロッパの食文化の近代化が一体何をもたらしたのか、この本を読んでちょっと考
えてみませんか。
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教皇庁の闇の奥 |
著者:ピーター・デ・ローザ |
出版:リブロポート ¥4944 |
推薦者:ことん |
歴代カトリック法王のエピソード集ですが、敬けんなクリ
スチャンは読まない方がいーです。法王達が神の名のもと
に何をしてきたか、が延々書かれているので気分がくらー
くなります。西洋史好きには、他の歴史書と並べて読むと
とても面白い一冊。 |
テルミン -エーテル音楽と20世紀ロシアを生きた男‐ |
著者:竹内正実 |
出版:岳陽舎 ¥2.000 |
推薦者:ことん |
洋楽プログレ好きな人なら知っている、テルミンという妙
な電子楽器。名前は制作者であるロシアの科学者の名字。
この人の活動は、ロシア革命が起こったころからで、亡く
なったのが1993年、ちょうどロシアの激動期に重なる。
冷戦下でのアメリカ公演やレーニンとの交流など、時代を
感じさせるエピソード盛り沢山な伝記。 |
ミツバチの文化史 |
著者:渡辺考 |
出版:筑摩書房 2200円 |
推薦者:ことん |
養蜂家が書くミツバチ飼育史。「英国には『ハチミツの歴史は人類の歴史』という言葉がある」そうで。お酒作ったりお菓子作ったり薬にしたりワイロに贈ったり。ギリシャの古典やアフリカの壁画などなど、あらゆる史料から養蜂と蜂蜜に関する記述を抜き出した、視点の面白い本です。 |
発想の航空史 |
著者:佐貫亦男(さぬきまたお) |
出版:朝日新聞社 700円 |
推薦者:ことん |
航空学の権威の先生が書く飛行機の発展史。この著者先生口が悪い(笑)。バカとか平気で書くとこが笑えます。好きだからこそ点が辛い。どの本にも飛行機とそれを発達させて来た人たちへの愛があふれまくってます。他に光人社「ヒコーキの心」「飛べヒコーキ」など多数あり。
特に飛行機好きでもない私にも大変面白い本で、思わず他も買って
しまったくらいですので、好きな方にはもっと面白いはず |
ガンダーラ 仏の不思議(講談社選書メチエ) |
著者:宮治昭 |
出版:講談社 1996年 1553円 |
推薦者:ひで |
釈迦が一度も訪れたことのないインド西北部のガンダーラ地方において仏教美術が栄えたのは何故か.本書は様々な文化が流入したガンダーラ地方におけるガンダーラ美術の成立の歴史,ガンダーラ美術にみられる仏伝図,仏像についての考察,そしてガンダーラ美術の伝播について書かれている.古代インド美術史および仏教美術史の一端を知るのに良いと思う |
図説 お金の歴史全書 |
著者:ジョナサン・ウィリアムズ 編 湯浅 赴男 訳 |
出版:東洋書林 3,800円 |
推薦者:夜なべ紳士 |
大英博物館のコイン=メダル部門の管理官が執筆したマネーの通史。基本的にはヨーロッパ中心ではあるが中国・極東、インド・東南アジア、イスラム諸国にもそれぞれ一章割かれている。統計学や古銭学的な物だけではなく、貨幣を通してそれをつくる人間、使う人間の文化的な背景をも窺える |
トイレの文化史 |
著者:ロジェ=アンリ・ゲラン 大矢タカヤス訳 |
出版:ちくま学芸文庫 |
推薦者:夜なべ紳士 |
フランスのトイレ事情を描いた本。古代・中世に割り当てられている分量はわずかなのが残念ではあるが、近世以降のトイレに関しては筆を尽くして書かれてある。そう、身近だが蓋をしてしまいたくなるトイレ、その歴史をこの本でぜひしっていただきたい。 但し、この本で知った事を人様に教える時は注意されたし。不用意に発言しつづけると、トイレ博士の肩書きを賜りかねない・・・ |
コーヒーが廻り 世界史が廻る |
著者:白井隆一郎 |
出版:中公新書 |
推薦者:夜なべ紳士 |
コーヒー、我々がなにげなく口にするこの黒々とした飲料は本来、動物が口にするような物ではなかった。イスラーム世界ではじめてコーヒーが飲まれるようになった時、コーヒーはワインではないだろうか、あるいは炭ではないだろうかと言う疑念が抱かれ始め、弾圧を受けたる。そのためか、コーヒーに正当性を与える様々な試みがなされた。それはヨーロッパでも変わらず、コーヒーが市民権をえるのには長い年月を要した。その後、ヨーロッパ社会や植民地に黒い影を落としつつ今日に至る。コーヒーを通して時代の特徴が垣間見れるお勧めの一冊である。あなたがコーヒーを飲んでいる事自体、長きコーヒーの歴史の産物といえよう。 |